2 Bluetoothの基本的なネットワーク形態

(1)ネットワークの構成
Bluetoothは一台のマスタ(親)と複数のスレーブ(子)というかたちでネットワークを構成します.この形態のネットをピコネットと呼びます.必要なときに,必要な機器だけが参加する一時的なネットワークです.例えば,切符を買うときには,目の前の自動販売機と自分のBluetooth端末だけのネットワークができ,用が済めば消えてなくなります.店にいけば,商品タグとBluetooth端末のネットワークができ,商品情報を見るだけでなく,最後にレジを通れば価格を合計して支払いも済ませられます. マスタとスレーブは交互に送信と受信を繰り返して通信します. また,マスタはスレーブにクロックと識別番号を与えます.ピコネットとピコネットをつなげることも可能です.つながってできたネットはスキャッタネットと呼ばれます.このように,Bluetoothはたくさんの機器を自由につないだり結んだりすることが大きな特長ですが,当初はデジカメとパソコンのように1対1での接続に多く使われるだろうと予想されています.

(2)周波数
通信に使う周波数は,2.4GHz帯です.この周波数帯は国際的にISMバンドと呼ばれ,本来は工業用途(Industry),科学技術用途(Scientific),医学用途(Medical)に解放されていますが,家庭で使う電子レンジの周波数として知られています(部分的には国によって異なる).このバンドはIEEEで定められた無線LANにも使われます.

(3)ホッピング
Bluetoothではデジタル情報を搬送波(電波)に乗せる一次変調として周波数シフトキーイング(0と1に対応して二つの周波数を切り換える方式:FSK)を用いていますが,最終的(二次変調)にはこれを周波数ホッピングという方法で,短時間の間に次々に周波数を切り換える方式を採用しています.具体的には,1MHzおきに定義された79の周波数を一秒間に1600回ものスピードで切り換えます.周波数を切り換えていくパターンをマスタとスレーブで予め示し合わせてホッピングしていきます.このパターンが解らない限り復調することはできませんし,特定の周波数だけを受信していたのでは信号の存在すら解りません.また,一部の周波数で混信や雑音があっても,瞬時に周波数が移動するので,全体としてはノイズが少なくなり,データの一部分を欠くだけなので,符号のエラー訂正によって再現が可能です.通信速度は最高で1Mb/sです.ただし,データの転送は上りと下りの速度が異なる非対称通信で,最高721kbps(下り)/56kbps(上り)で,別個に音声用に64kbpsがサポートされます.最高と断っているのはBluetoothではノイズが多いときなどに転送速度を遅くする様にしてあるためです.ノイズの多い環境ではスピードが遅くなることも予想されます.周波数ホッピングは当初軍事目的で開発された手法で,ノイズや混信に強いこと,秘匿性が高いことが特長です.


back top next